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山口県 下関市

角島大橋 橋の右と左で、海の色が違うんだけど!

最初は、写真一枚だったの。菜の花の土手と、島をよけて曲がる橋。それを自分の目で見たくて、東京からフェリーに車ごと乗った。実際に渡ってみたら写真の何倍もきれいで、気づいたら、季節を変えて何度も来てた。本土と角島を結ぶ長さ1,780mの角島大橋と、その先の小さな島で、私が見たもの、食べたもの、ちょっと失敗したことの話。

橋は同じなのに、行くたびに、そのまわりで違う花が待ってたの。花の名前をひとつ覚えるたびに、また渡りに来る理由が増えていく。

エメラルドとコバルトの海を渡る白い角島大橋。鳩島のそばを島へ向かって走る、遠くの小さな赤いオープンカー

夏7〜8月

左右で色の違う海と、灯台のハマユウ

7月中旬、また赤いオープンカーごと船に乗って山口へ。4日かけて回る旅の2日目に、角島へ向かった。本土側の坂を下りきったとたん、目の前がぱっと開けた。海の上に橋が一本、ゆるやかなカーブを描いて島へ伸びてる。長さ1,780m。無料で渡れる橋の中では、国内でも最大級の長さなんだって。屋根を開けたオープンカーで、そのまま海の上へ。

走りだしてすぐ、えっ、てなった。海の色が、橋の右と左でぜんぜん違うの。片っぽは明るいエメラルドグリーンで、もう片っぽは濃いコバルトブルー。光のせいなのか、ほんとに違うのか、どうしても確かめたい。でも運転中だし、それは帰りのお楽しみにとっておく。ちゃんと前を見て、ハンドルをぎゅっと握り直した。

渡った先の角島は、端から端まで車で10分くらいの小さな島。その先に、明治9年に初めて明かりが灯った角島灯台が立ってる。御影石でできた灯台で、いまも現役なのに、中を上ることができるの。らせん階段は105段。途中で息が切れて、足もパンパン。それでも、てっぺんからの景色が見たくて、最後まで上りきった。

てっぺんに出たとたん、見わたすかぎりぜんぶ海になった。強い風に髪があおられて、あわてて手すりにつかまる。下を見ると、灯台のまわりの草地にハマユウが群れて咲いてた。細い花びらがくるんと反ってて、遠くから見ると小さな花火みたい。下りてから、麦わら帽子を押さえて、花のあいだの小道をゆっくり歩いたの。

お昼は、名物の剣先イカのお刺身。透きとおった身をお箸で持ち上げて光にかざしたら、向こうの景色まで透けて見えそうで、口に運ぶ前に、角度を変えて何度も確かめてた。ひと切れ口に入れたとたん、甘さがじわっと広がって、身はとろけるみたいにやわらかい。イカって、こんなに甘くなるものなのね。このあたりの特牛(こっとい)イカは、最高級のAランクに認められたイカなの。最後のひと切れだけは、透け具合を確かめずに、すぐ口へ運んだ。

帰り道、橋を渡り終えて海士ヶ瀬公園に車を停め、行きに気になってた海の色を確かめた。やっぱり、橋の右と左で色が違って見える。水がこれだけ澄んでると、深さや海の底の違いが、そのまま色の違いになって見えるのね。行きに見たのは見間違いじゃなかったってわかって、車の横で小さく手をたたいちゃった。

8月に入ってから、青と白のバイクで、もう一度角島へ。車の旅とは別の、バイクだけの旅。お目当ては角島大浜の砂浜。浜の上の駐車場にバイクを停めた。まぶしいくらい白い砂浜は、数えきれない貝殻が砕けて、長い年月をかけてできたもの。手をかざして眺めた海はどこまでも透きとおってて、波打ち際の砂の粒まで、数えられそうなくらいだった。

この日は、テイクアウトの角島プリンを持ってきてたの。山口県産の素材にこだわったプリンが日替わりで並ぶって聞いて、どれにするか本気で迷ったのに、最後の決め手は「いちばん最初に目が合ったから」。シートの影でふたを開けてスプーンを入れたら、冷たくて、つるんとなめらか。日差しで火照ってた頬まで、いっしょにゆるんだ。白い砂浜を見下ろしながら食べるプリンは、部屋で食べるのとはぜんぜん別のおいしさだった。

白いハマユウが群れて咲く草地の小道で、麦わら帽子を押さえながら、灰色の石造りの角島灯台を見上げて笑う主人公。白いブラウスにミントのミニスカート、背景にエメラルドからコバルトへ変わる海と緑の島々
白い砂浜とエメラルドからコバルトへ変わる海を見下ろす駐車場で、ヘルメットをシートに置いた青と白のバイクの横に立ち、手をかざして海を眺める主人公
透きとおった剣先イカのお刺身を箸で持ち上げて光にかざし、目を輝かせる主人公。大葉と大根のつまを添えた皿と醤油の小皿、向こうに夏の海と緑がぼんやり光る

ストーリー部分はスポットをイメージしたフィクションです。正確な情報は、公式の観光サイトや情報サイトをご確認ください。

夜の角島大橋

7月の夜、月の光が海に道を描く下で、街灯が等間隔に灯る角島大橋を、赤いオープンカーが尾灯を光らせて島へ渡っていく。手前に本土側の高台と海辺の広場
7月の夜、もう一度だけ島へ渡ったの。等間隔の街灯が近づいては後ろへ流れていって、月の光が海の上にまっすぐな道を描いてた。

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名物

下関北浦特牛(こっとい)イカ

角島の名物は剣先イカ。なかでも「下関北浦特牛イカ」は最高級のAランクに認められたイカで、甘みが強く、食感がやわらかいのが特徴です。私は夏のお昼にお刺身で食べました。噛むたびに甘さが増えていって、次のひと切れへ伸ばすお箸が、自分でもおかしいくらい速くなりました。角島に来たら、ぜひ味わってみてください。

角島の海の幸

剣先イカのほかにも、ウニやアジ、シラス、ワカメ、アカモクが角島の名物です。私はまだイカしか食べていないので、次は島の海の幸を順番に味わうつもりです。

角島プリン

角島のまわりにある、テイクアウト専門のプリン屋さんです。山口県産の素材にこだわったプリンが、日替わりで並びます。私は夏のバイク旅で、浜の上の駐車場まで持っていって食べました。冷たくてなめらかで、日差しで火照った頬までゆるみましたよ。

瓦そば

山口名物の瓦そばは、角島のまわりの絶景レストランでも食べられるそうです。冬の旅では、スイセンの香りと波の花に夢中で、瓦そばのことはすっかり頭から抜けていました。思い出したのは、帰りの船の上です。

見どころ

鳩島をよけて弧を描く、1,780mの橋

角島大橋は、本土と角島を結ぶ長さ1,780mの橋で、2000年に開通しました。鳩島を避けるように流れる線を描いていて、無料で渡れる橋の中では国内最大級の長さです。完成したときは、一般道路の離島架橋として国内最長だったそうです。運転席から見ると、このカーブのおかげで、渡りながら島がだんだん正面に回りこんできます。まっすぐな橋だったら、この感じは味わえなかったと思います。

上れる灯台と、国内5か所だけの第1等レンズ

角島灯台は、明治9年、1876年に初点灯した、高さ29.62mの御影石造りの洋式灯台です。全国に16しかない上れる灯台のひとつで、細くて急な105段のらせん階段があります。第1等レンズを使う現役の灯台は国内に5か所だけで、角島灯台はそのひとつ。2020年には、現役の灯台として初めて重要文化財に指定されました。じつはこの灯台、イギリス人技師R・H・ブラントンの指導でつくられた灯台のひとつで、日本海側に最初に置かれた洋式灯台でもあるんです。できたときは、石造りの灯台としていちばん高かったそうです。105段を上りきって、ぐるっと一面の海に囲まれたときは、足の疲れなんて吹き飛びました。

貝殻からできた白い砂浜

角島大浜海水浴場の白い砂浜は、数えきれない貝殻が砕けて、長い年月をかけてできたものです。足もとの砂が、もとは貝殻だったなんて、ちょっとロマンチックですよね。夏は海水浴の人でにぎわい、角島大浜キャンプ場もこの時期に合わせて開設されます。

道のデータ

東京からの行き方

東京から
フェリーで新門司港へ有明から徳島を経由する便で、35時間ほど
新門司港から
約73km関門橋と中国自動車道などで、車で1時間20分ほど
高速道路のIC
小月IC・美祢IC(中国自動車道)角島大橋まで、どちらも車で約60分
橋の手前の駐車場
海士ヶ瀬公園国道191号から県道275号へ。駐車場は24時間無料

角島大橋

長さ
1,780m
船の通る高さ
18m

本土側の海士ヶ瀬公園から、鳩島のそばを通って角島へ渡ります。

幅員は6.5m。途中には、船が通れるように高さ18m・幅70mをとった区間があります。橋のいちばん高いところを越えるたびに、この下を船がくぐっていくところを、つい想像しちゃうんです。