走破記 · 2025-10-26
ROUTE 1 - HAKONE (steam mix)
休みの日の早朝、国道1号の上りのふもとで。西湘の潮の匂いが薄れ、海の水平線がルームミラーの奥へ沈んでいく。小田原の街並みが入れ替わるように後ろへ流れると、空気がひとつぶん澄んで、赤いオープンカーは——息を速めながら——山の鼓動に同調する。
宮ノ下、小涌谷。ガードレールの向こうで、白いものが立ちのぼっている。かすかな硫黄が鼻先をかすめて、「もう早く温泉に浸かりたい」という思いが、アクセルを踏む足より先に前へ出る。
標高が上がるほど霧は濃くなり、肌に触れる空気が冷たくなる。コーナーごとに視界が白く途切れて、胸の奥の不安まで増幅される。そして大涌谷の手前で、白は壁みたいに渦を巻いた。温泉の湯気——それとも、路面から立ちのぼる白煙?
湯本へ向かう高地の朝のドライブを、ハイスピードのユーロビートに乗せて描く一曲。最後の問いは胸にしまったまま、私はもう一段、白の中へ車を進める。